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「チャイニーズ覚醒剤」が日本浸食 目立つ台湾組織、人格と健康を破壊する“白い粉”

 「チャイニーズ覚醒剤」が日本を席巻している。全国の税関が昨年押収した密輸された覚醒剤のうち、中国からの押収量が約1049キロで全体の7割を占め、過去最多に達した。国際的な密輸組織の影がちらつくなか、存在感を際立たせているのが台湾の組織だ。警察庁は、摘発された密輸事案の7割超に台湾の組織の関与を確認。捜査関係者は、「中国と台湾、日本の密売組織が連携し全体を押し上げている」と警戒を強めている。中台日で形成されつつある「麻薬コネクション」に捜査当局は警戒を強めている。

 「早急な実態解明が必要だ」。薬物犯罪の捜査に携わる警察幹部は声を落としてこうつぶやいた。

 日本国内で流通する違法薬物のなかで圧倒的シェアを占める覚醒剤。乱用者の人格と健康を破壊する「白い粉」は、芸能人にも逮捕者を出すほどに蔓延(まんえん)し、いまだ根絶には至っていない。その多くは国外から持ち込まれたものだが、昨年取締当局が警戒する密輸ルートにある変化が生じていた。

 「摘発した密輸事案に台湾出身者の関与が目立った。そして、その多くで発送元となったのが中国だった。台湾の組織が活動を活発化させ、中国の現地組織と連携している疑いが強い」(捜査幹部)

 そうした現状の一端を映し出しているのが、警視庁組織犯罪対策5課が昨年12月24日に摘発した事件だ。世間がクリスマスイブの喧噪に沸くなか、組対5課の捜査員が大阪市内のホテルに踏み込んだ。同課が覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で逮捕したのは、63歳=当時=の台湾出身の男。前日の23日、関西国際空港に降り立った男は、裏社会で「王(ワン)」という呼び名で知られる“有名人”だった。

 「王は台湾の密売組織の大物で、アジア地域での麻薬密輸を取り仕切る元締めとして活動。その筋では『エージェント』『支配人』などと呼ばれていた」(捜査関係者)。組対5課は、男を昨年8月の覚醒剤密輸事件に関与した疑いで逮捕し、今年1月には別の密輸事件に関係した容疑で再逮捕した。

 捜査当局は、台湾の組織の活動とともに、覚醒剤の「出荷地」にも警戒の目を向けている。キーワードは「中国発」。さらにそこには、台頭著しい台湾の組織の影もちらついている。組対5課が手掛けた「王」がかかわる2つの事件とも、覚醒剤の発送元となっていたのは中国・香港だった。昨年5月には、沖縄地区税関が那覇港に停泊中のヨットから覚醒剤約600キロ(末端価格420億円相当)を押収した。台湾出身の男女6人が乗ったヨットは台湾の高雄港を出発したが、積み込まれていた覚醒剤はやはり「中国産」だったとみられる。

 台湾では、「竹連幇」や「四海幇」、「天道盟」など、大小さまざまな組織の活動が確認されており、日本国内の複数の暴力団と交流を持っているとされる。捜査関係者は、「中国には東南アジアからの流入ルートや製造拠点がある。在京の指定暴力団には現地に組幹部を常駐させて覚醒剤の密輸を取り仕切る組織もあり、台湾マフィアと連携して『中国産』の覚醒剤を密輸するのは珍しい話ではない。昨年は特にこの動きが活発だったといえる」と説明する。

 台湾と中国、海を越えてつながる「麻薬コネクション」。その傾向は統計からも明白だ。財務省によると、昨年1年間に中国の空港や港から密輸され、全国の税関が押収した覚醒剤は全体の7割を占める約1049キロ。同省が統計を取り始めた昭和60年以降で最多だった。この影響もあって、全体の押収量も27年の約422キロから約3・6倍の約1501キロになったという。

 中国から密輸されて全国の税関が摘発した覚醒剤の押収量は、19~25年は100キロ以下で推移。26年には25年の約62キロから約3・2倍の約200キロに急増したが、翌27年には約104キロに半減していた。28年は、ここから10倍以上に「激増」したことになる。さらに警察庁の調べで、覚醒剤の密輸事案に台湾の犯罪組織が関与した割合が72%に及んでいたことも明らかになった。

 密輸の手口にも変化が見て取れる。これまで目立っていた航空機旅客による密輸が激減する一方で、海上貨物に隠して持ち込む事案が激増。貨物船などを利用した商業貨物で一度に大量に密輸するケースが目立ち、押収量は約653キロで全体の4割以上に及んだ。「検査をすり抜けるため、巧妙な偽装が施されていた」。東京税関の担当者は昨年11月、東京都江東区の青海コンテナ埠頭(ふとう)で見つけたある貨物についてこう振り返った。

 貨物は中国・福建省から出港したコンテナ船に積載されていた「小石運搬機」として届け出られた鉄製の容器2個。空洞になっていた内部には、末端価格105億円相当の約150キロの覚醒剤が1キロずつ小分けされて詰め込まれていた。内側の側面は、「エックス線に反応しないように鉛で覆われていた」という。この事件でも警視庁が摘発したのは台湾出身の男(37)=当時。東京税関が昨年7月、中国・広東省の港から青海コンテナ埠頭に着岸した貨物船から、商品ケースに隠された約154キロ(末端価格約107億8千万円)の覚醒剤を発見した事件でも、台湾出身の男3人が摘発されている。

 前出の2つの事件のように、100キロ超の大型取引も頻発した。ある暴力団関係者は、「ここ最近、シャブ(覚醒剤)の取引に新規参入するヤクザが目立つ。そうしたヤクザは、少量を定期的に仕入れて細々としたシノギにするのではなく、一度に大量に仕入れて一気にさばく傾向にある」と声を潜める。暴力団を取り巻く情勢の変化が覚醒剤の市場にも影響をもたらした可能性は十分にありそうだ。

 一方、航空機旅客によって密輸された覚醒剤の押収量は、24~26年に200キロ前後で推移し、これまで主要な手口となっていたが、27年は前年(246キロ)の約3分の1の84キロにまで落ち込んだ。税関担当者は、「手口の変化を察知し、危機感を持って取り締まりに当たったことが押収量の増加につながった。覚醒剤の密輸ルートについてさらに情報収集を進め、水際での流入阻止に努めたい」と話している。

  

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