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山口組「極心連合会」離脱騒動の内幕…表向きは体調不良、実はトップ最右翼と“対立”?

 全国最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)で12月上旬、組織のナンバー3に当たる統括委員長が山口組を離脱しようとする動きが表面化した。先代組長の墓参り後に突然行方をくらませ、実際に引退や独立を周囲に示唆したのだ。しかし3日後、一転して残留の意向を伝えて「元の鞘」に収まったとみられる。「神戸山口組」との分裂騒動で揺れる山口組は、離脱の動き自体を「無かったこと」にしている模様だが、関係者は「離脱の動きがあったのは間違いない」と口をそろえる。幹部同士の確執、分裂の責任問題…。背景について取材を進めると、現在の山口組を取り巻く混沌とした内情が浮かび上がった。

■予定外の事態

 12月1日午前、神戸市内の霊園に、篠田建市(通称・司忍)6代目組長ら山口組の最高幹部が勢ぞろいした。この日は、3年前に死去した渡辺芳則5代目組長の命日。篠田組長らは歴代組長の名が刻まれた組碑の前で頭を垂れた後、車に乗り込み、法要が営まれる総本部へ向かった。

 ここで予定外の事態が起きる。篠田組長、高山清司若頭に次ぐナンバー3の統括委員長を務める直系団体「極心連合会」(大阪府東大阪市)の姜弘文(通称・橋本弘文)会長が乗った車だけが車列を外れ、総本部とは別の方向へ走り去ったのだ。

 携帯電話もつながらず、「連絡がつかない」と総本部では蜂の巣をつついたような騒ぎになった。やがて姜会長が、拠点の東大阪市内に戻っていることが判明。すぐさま複数の直系組長が駆けつけ、総本部へ戻るよう説得したという。

 だが捜査関係者によると、姜会長は頑として首を縦に振らなかった。そればかりか、統括委員長のポストを辞めることや、山口組から抜けて独立組織として極心連合会を率いていくことなどを示唆したという。

■入れ替わり立ち替わり慰留

 山口組は現在、高山若頭が恐喝事件で実刑判決を受けて服役中。姜会長は実質的にナンバー2として、組織をとりまとめる立場だった。

 そんな重要人物が万が一離脱するとなれば、他の直系団体や傘下組員が雪崩を打って山口組を離れる可能性も考えられる。

 内部崩壊を防ぐために、絶対に思いとどまらせなければならない-。幹部らは入れ替わり立ち替わり姜会長の元を訪れ、翻意を促すと同時に断続的に会合を開くなど、必死の慰留工作を続けた。

 再び事態が動いたのは3日後の4日。捜査関係者によると、姜会長は午前中に名古屋市内で篠田組長に面会し、その足で新幹線に乗って総本部での最高幹部の会合に出席した。墓参り後からの一連の出来事について「体調不良によるものだった」と説明し、改めて残留を表明したという。

■芸能界などに人脈

 一躍「渦中の人」となった姜会長とは、一体どんな人物なのか。

 山口組の名門組織で、現在は神戸山口組の中核団体・山健組の出身。山健組傘下だった極心連合会を率いて同組の幹部を務めた後、平成17年に内部昇格する形で山口組の直参(直系組長)となり、24年からは新設された統括委員長のポストに就任した。

 その名が一般に広く知られるようになったのは約4年前、テレビ番組の司会などで活躍していた有名男性タレントが暴力団関係者との親密交際を理由に芸能界を引退した騒動だ。この暴力団関係者が姜会長で、芸能界やスポーツ関係に太い人脈を持っていることなども取りざたされた。

 今年8月下旬、山健組井上邦雄組長ら複数の有力直系組長が山口組を離脱し、神戸山口組を結成すると、姜会長は分裂後に初めて発行された山口組の機関紙「山口組新報」(11月1日号)に巻頭文を寄せた。離脱組への憤りや山口組に残った組員への激励とともに、こうつづっていた。

「私を始めとする執行部一同は新たな改革に取り組み、(中略)今日までの反省と、決意と覚悟を新たにしております」

■分裂批判を一身に…

 「決意と覚悟」を表明したわずか1カ月後に持ち上がった離脱騒動。豹変(ひょうへん)の背景には、一体何があったのか。

 大阪府警の捜査幹部は「(姜会長が)統括委員長から退くのでは、という情報は以前からあった。しかし、一本独鈷(いっぽんどっこ=独立)で行くという話まで出るとは、相当に嫌気が差していたのでは」と話す。

 分裂以降、山口組の傘下組織では、組員が神戸山口組に移ったり暴力団から足を洗ったりするケースが相次いでいるほか、分裂の余波とみられる事件も頻発している。

 10月下旬には、山口組から除籍処分を受けた直後に直系団体・三代目倉本組河内敏之組長(当時)が大阪市内で拳銃自殺。分裂をめぐり、神戸山口組に移籍する組員と責任を問う執行部との間で板挟みになり、心労を抱えていたとされる。分裂との背後関係は不明だが、11月中旬には三重県四日市市で、同市に拠点を置く直系団体・二代目愛桜会菱田達之会長が撲殺される殺人事件も発生。犯人はいまだ逮捕されていない。

 同月下旬には現役の直系団体・三代目熊本組(岡山県玉野市)が神戸山口組に移籍。こうした事態に責任を感じてか、姜会長は分裂後から周囲に統括委員長のポスト返上や引退を申し出ていたとされる。

 最高幹部の会合などでも、実際に一部幹部から姜会長の責任を厳しく追及する声が上がっていたが、篠田組長が申し出を認めなかったため組織にとどまっていたとみられる。捜査幹部は「積もり積もった思いが暴発する形で、(墓参り後の雲隠れという)今回の行動に発展した可能性はある」と推測する。

■幹部同士の確執も?

 一方で、分裂以前からの幹部同士の確執が、今回の問題の根幹にあると指摘する声もある。

 複数の関係者によると、約2年前、姜会長と、極心連合会>のナンバー2である若頭で有力組織「極粋会」(東大阪市)の山下昇会長の間でトラブルがあり、山下会長は若頭から外れた。

 だがその後、極粋会極心連合会と同じ山口組の直系団体に昇格。この人事に関与したのが、直系団体・弘道会(名古屋市中村区)の竹内照明会長(現・山口組若頭補佐)。メンツをつぶされた形の姜会長と竹内会長の間に確執が生まれたという。

 弘道会は篠田組長、高山若頭という山口組2トップの出身母体。将来の山口組組長候補の最右翼と目される竹内会長の発言力は強いとされる。ナンバー3のポストにある姜会長も、「他の幹部もいる前で竹内会長に公然と批判されることもあったようだ」(捜査関係者)。

 加えて離脱騒動が表面化する約10日前にも、姜会長と竹内会長が激しく口論になる場面があったという。竹内会長は分裂後、各地の傘下組織を激励のため訪問しており、その際に姜会長の処遇について言及した内容が姜会長の耳に入り激怒した-という情報もある。

■一転残留に関係者は…

 ポストの返上や引退にとどまらず、山口組から抜けて神戸山口組ではない「第三極」になることすら想定された今回の離脱騒動。しかし結果として、姜会長は組織にとどまった。将来的に役職から外れる可能性はあるが、表だった処分も行われていない。

 だが、一連の事態を注視していた関係者の見方は冷ややかだ。

 「一度出したものを引っ込めるのも、それを認める組織もどっちもどっち。姜会長はもちろん、山口組自体の求心力の低下は免れないだろう」。ある捜査員はこう分析した。

 山口組側は対外的に、姜会長は体調不良で静養していただけで、離脱騒動自体がなかったという説明をしているもようだ。ただ、話を聞いた他団体の組長は、あきれたようにつぶやいたという。「辞めるのを止めたって…まるでコントや」

 暴力団業界の「正月」にあたる12月13日には、「事始め式」が総本部で行われ、新年の指針として「有意拓道(ゆういたくどう=意志あるところに道は拓ける)」という言葉が示された。しかし、言葉とは裏腹に創設100年の節目で分裂という憂き目に遭い、内情の不安定さをさらけ出した全国最大の暴力団の行く末は、混迷の度を深めている。

  

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