【判決要旨】工藤会総裁に死刑判決 会長に無期懲役
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福岡地裁で24日午前10時に始まった特定危険指定暴力団・工藤會による一般市民を標的とした4件の殺傷事件で、殺人などの罪に問われた工藤會トップで総裁・野村悟被告(74)と、工藤會ナンバー2の会長・田上不美夫被告(65)の判決公判は、「主文」の言い渡しが後回しとなり、判決理由から述べられた。野村被告は認定事実が読み上げられる間、ときおり首をかしげ、隣にいた田上被告は苦笑いを浮かべるなどしていた。

左・野村悟被告
右・田上不美夫被告
午後4時頃に「主文」が言い渡され閉廷が告げられると、両被告の態度は一変。
野村被告は退廷間際、足立勉裁判長に向かって「公正な判断をお願いしたのに全然公正じゃない」「あんた、生涯後悔するぞ」などと、脅すように大きな声を上げ退廷。
無期懲役が言い渡された田上被告も「ひどいな、あんた。足立さん」「東京の裁判官になって良かったね」などと、威圧ともとれる発言を残して退廷した。
足立裁判長は2019年の初公判から今年3月の結審まで計62回の公判を担当。4月に東京高裁に異動したが、この日は出張して判決を読み上げていた。
一般市民襲撃4事件で野村被告を死刑、会長・田上被告を無期懲役とした福岡地裁の判決要旨は次の通り。
【工藤会と被告】
野村被告は1986年ごろ、工藤連合の2次団体の組長となり、90年に工藤連合(二代目)が発足した際、田上被告を序列2位に抜てきした。2011年に五代目工藤會が発足し、野村被告が総裁、田上被告が会長となり、序列が厳格に定められていた。
野村被告は最上位の扱いを受け、特別な存在として見られ、工藤會内で実質的にも最上位の立場で、重要事項についての意思決定に関与していたと推認できる。重要事項に関し、執行部が両被告の意向を無視し、実行することは組織のありようから考え難い。
【元漁協組合長射殺】
事件は両被告が被害者一族の利権に重大な関心を抱き、交際を拒絶される中で起こった。動機が十分にあり、両被告の関与がなかったとは考えられず、共謀が認められる。弁護人は起訴は公訴権を乱用した極めて不当かつ違法なもので無効だと主張するが失当だ。
【元福岡県警警部銃撃】
工藤會の最高幹部と直接会話できる数少ない捜査員だった被害者を襲撃するのは、工藤會にとって重大なリスクがあることは容易に想像でき、両被告に無断で起こすとは到底考えられない。
【看護師襲撃】
野村被告は被害者が勤める美容形成クリニックで受けた施術や対応に不満を抱いており、動機があった。他の組員に動機はなく、無断で実行した可能性はない。
【歯科医襲撃】
田上被告は港湾建設工事に影響力を有するとみられていた被害者一族の利権に注目し、被害者の父親に利権交際に応じるよう要求したが、父親は応じなかった。野村被告の関心事である利権介入に大きく関係し、多数の組員を組織的に動かす犯行を、田上被告が野村被告の関与なしに指示するとは到底考え難い。
【量刑理由】
野村被告は巨額の利権を継続的に得ようと、組員らと共謀して漁協の元組合長を殺害した。他の3事件も組織的・計画的で人命軽視の姿勢は著しい。体感治安が著しく悪化する甚大な社会的影響が生じた。暴力団の組織力を利用し、首謀者として関与した。極刑の選択はやむを得ない。
田上被告の責任は野村被告に次いで重く、無期懲役刑を科すのが相当だ。検察官は、元警部銃撃事件で経済的利益獲得に資するという目的も併せ持っていたとして罰金刑も主張したが、飛躍があり、科すことはしない。
【主文】
野村悟被告を死刑、田上不美夫被告を無期懲役とする。
両被告の弁護側は控訴する方針。
福岡地裁で24日午前10時に始まった特定危険指定暴力団・工藤會による一般市民を標的とした4件の殺傷事件で、殺人などの罪に問われた工藤會トップで総裁・野村悟被告(74)と、工藤會ナンバー2の会長・田上不美夫被告(65)の判決公判は、「主文」の言い渡しが後回しとなり、判決理由から述べられた。野村被告は認定事実が読み上げられる間、ときおり首をかしげ、隣にいた田上被告は苦笑いを浮かべるなどしていた。

左・野村悟被告
右・田上不美夫被告
午後4時頃に「主文」が言い渡され閉廷が告げられると、両被告の態度は一変。
野村被告は退廷間際、足立勉裁判長に向かって「公正な判断をお願いしたのに全然公正じゃない」「あんた、生涯後悔するぞ」などと、脅すように大きな声を上げ退廷。
無期懲役が言い渡された田上被告も「ひどいな、あんた。足立さん」「東京の裁判官になって良かったね」などと、威圧ともとれる発言を残して退廷した。
足立裁判長は2019年の初公判から今年3月の結審まで計62回の公判を担当。4月に東京高裁に異動したが、この日は出張して判決を読み上げていた。
一般市民襲撃4事件で野村被告を死刑、会長・田上被告を無期懲役とした福岡地裁の判決要旨は次の通り。
【工藤会と被告】
野村被告は1986年ごろ、工藤連合の2次団体の組長となり、90年に工藤連合(二代目)が発足した際、田上被告を序列2位に抜てきした。2011年に五代目工藤會が発足し、野村被告が総裁、田上被告が会長となり、序列が厳格に定められていた。
野村被告は最上位の扱いを受け、特別な存在として見られ、工藤會内で実質的にも最上位の立場で、重要事項についての意思決定に関与していたと推認できる。重要事項に関し、執行部が両被告の意向を無視し、実行することは組織のありようから考え難い。
【元漁協組合長射殺】
事件は両被告が被害者一族の利権に重大な関心を抱き、交際を拒絶される中で起こった。動機が十分にあり、両被告の関与がなかったとは考えられず、共謀が認められる。弁護人は起訴は公訴権を乱用した極めて不当かつ違法なもので無効だと主張するが失当だ。
【元福岡県警警部銃撃】
工藤會の最高幹部と直接会話できる数少ない捜査員だった被害者を襲撃するのは、工藤會にとって重大なリスクがあることは容易に想像でき、両被告に無断で起こすとは到底考えられない。
【看護師襲撃】
野村被告は被害者が勤める美容形成クリニックで受けた施術や対応に不満を抱いており、動機があった。他の組員に動機はなく、無断で実行した可能性はない。
【歯科医襲撃】
田上被告は港湾建設工事に影響力を有するとみられていた被害者一族の利権に注目し、被害者の父親に利権交際に応じるよう要求したが、父親は応じなかった。野村被告の関心事である利権介入に大きく関係し、多数の組員を組織的に動かす犯行を、田上被告が野村被告の関与なしに指示するとは到底考え難い。
【量刑理由】
野村被告は巨額の利権を継続的に得ようと、組員らと共謀して漁協の元組合長を殺害した。他の3事件も組織的・計画的で人命軽視の姿勢は著しい。体感治安が著しく悪化する甚大な社会的影響が生じた。暴力団の組織力を利用し、首謀者として関与した。極刑の選択はやむを得ない。
田上被告の責任は野村被告に次いで重く、無期懲役刑を科すのが相当だ。検察官は、元警部銃撃事件で経済的利益獲得に資するという目的も併せ持っていたとして罰金刑も主張したが、飛躍があり、科すことはしない。
【主文】
野村悟被告を死刑、田上不美夫被告を無期懲役とする。
両被告の弁護側は控訴する方針。